什虎(じゅうこ)攻略編は秦と魏が共闘して楚軍と戦うという特殊なエピソードである。
秦軍の騰と魏軍の呉鳳明という著雍を巡って戦った2人が手を組んでいるため、著雍の戦いと併せて読むとより熱い。
さらに敵となる楚軍が楚軍とはやや違う“什虎軍”という特殊な相手なので、彼らの強さと背景に注目だ。
それでは本記事では什虎(じゅうこ)攻略編のあらすじをネタバレ解説、注目ポイントをわかりやすく振り返っていく。
キングダム:什虎(じゅうこ)攻略編までの流れ
鄴を攻略し趙攻略に王手をかけた秦国。
五か月経って列尾―橑陽―鄴の三角地帯への大移住も始まり、新領土の秦国化が進んでいた。
引き続き王翦・桓騎・楊端和軍と論功行賞によって将軍となった信・王賁・蒙恬の軍が前線を張っており、一気に趙王都・邯鄲の攻略を目指す。
趙国が李牧を巡る内乱でゴタついていることもあり、秦国にとってはこれ以上ない攻め時であった。
ところが李牧の言葉を横取りした郭開が李牧の進言通りに扈輒軍+邯鄲軍で対秦の前線を固めはじめ、秦軍は鄴攻略の翌年になっても邯鄲に迫るどころかその防衛線を抜くことが出来ずにいた。
趙の大防衛線に対する兵数が足りていないことが一番の要因なのだが、他の拠点の守りを薄くするわけにはいかない。
特に黄河を挟んだ魏国との前線を薄くすると、その隙に攻め入られヘタをすると鄴まで奪われかねないのだ。
そこで昌平君は対魏の憂いを無くし趙攻略に集中するため、“魏国と同盟を結ぶ”という奇策を打ち出す。
中華統一を成さんとしている秦に当然魏が協力などするわけがないのだが、昌平君は“楚の要衝・什虎を共に攻めて奪取したら魏に譲る”という条件を魏に持ち掛けた!
キングダム:什虎(じゅうこ)攻略編は何巻?
什虎(じゅうこ)攻略編は60~61巻で描かれる。
史実にない戦い且つ飛信隊も参加しないエピソードであり話数も少ないが、今後の蒙武と昌平君の関係性に関する布石かと思われるようなエピソードにもなっているので見逃せない。
巻末おまけマンガもコミックスの醍醐味だが、60巻のおまけマンガでは王賁の美人な許嫁・彩華ちゃんも登場するので注目だ。
キングダム:什虎(じゅうこ)攻略編概要
楚・什虎(月知平原にて布陣)
※魏・楚・韓・秦の4か国の国境地帯
●秦魏同盟軍12万
●秦軍5万【総大将:蒙武、本陣預かり軍師:蒙毅】
(蒙武軍3万+騰軍1万+録鳴未軍1万)
●魏軍7万【総大将:呉鳳明】
(呉鳳明+乱美迫+龍范+荀詠+馬介)
●楚軍11万
●什虎軍8万【総大将:満羽、軍師:寿胡王】
(満羽軍3万+千斗雲軍+玄右軍)
●楚軍3万
(項翼軍1万5千+白麗軍1万5千)
什虎城の奪取
什虎は魏のものになる
秦魏の3年間の同盟締結
キングダム:什虎(じゅうこ)攻略編の注目人物
【秦軍】
●蒙武
秦国随一の猛将で、什虎の戦いでは秦軍総大将を務める。
今回は敵将・満羽が見据える蒙武の“背負っているもの”に注目だ。
【魏軍】
●呉鳳明
魏軍第一将で、什虎の戦いでは魏軍総大将を務める。
呉鳳明視点での秦軍の強さと、それを活かした戦略に注目だ。
【什虎軍】
●満羽
什虎城城主で、什虎の戦いの楚軍総大将。
明るい振る舞いの反面、どうやら悲劇的な過去があったらしく、蒙武との出会いで何かが呼び起されたようだ。
キングダム:什虎(じゅうこ)攻略編見どころ
①魏軍の到着を待たず蒙武出陣
什虎攻めの日の当日、蒙武軍3万が什虎・月知平原に到着。
魏国からの返答はないままであったが、蒙武は蒙武軍だけで8万の什虎軍に立ち向かっていった。
敵の挟撃にハマる前に敵本陣を討つべく蒙武は怒涛の勢いで攻め始めるが、満羽という脅威の存在に気づき目標を変える。
②秦・楚・魏が続々集結
そこへ騰・録鳴未軍2万が到着。
とても心強い2武将が来てくれたが、城攻めをしなければいけないことも考えると正直、什虎軍に対してまだ戦力が足りないと感じられた。
ところがさらに楚の援軍として項翼・白麗軍3万が到着してしまう。
立て直しのために蒙武軍を一旦脱出させたいところであったが、什虎軍は巧みに騰軍を阻み援護を封じた。
するとそこへ呉鳳明率いる魏軍7万が到着!
魏国は同盟を受けることにしたのだ。
ここで各軍改めて布陣しなおす。
③秦と魏の共闘
秦と魏は互いの戦場が重ならないよう対極に展開し、挟撃の形を取る。
魏軍は呉鳳明の指揮によって攻め手を悟らせず、秦軍は蒙武と騰が先頭に立つことで戦場を切り開き、両サイドから什虎軍本陣に迫っていく。
また、最も近い秦・録鳴未軍と魏・乱美迫軍は互いに混乱しながらも共闘し、千斗雲軍と対峙していた。
④什虎軍は楚軍にあって楚軍にあらず
しかし共闘による秦魏の猛攻にも什虎軍は揺るがない。
実は什虎軍はそれぞれがかつて滅んだ小国の生き残りであり、国が消失してもなお戦で敗れず、観念した楚が生存を認めた、という経緯を持つ強軍なのだ。
つまり大国・楚と戦い続け、それを返り討ちにしてきた怪物たちなのである。
そして早くも魏将・馬介が玄右に討たれてしまった。
⑤秦魏軍の動きが止まる
馬介が討たれたことで魏軍の攻勢が弱まる。
こうした時に膠着を崩すのが乱美迫の役目なのだが、今回は千斗雲に阻まれ動けずにいた。
千斗雲は録鳴未と乱美迫を1人で相手取っているのだが、それでも乱美迫を自由にさせないのである。
一方で秦軍の方も蒙武軍は満羽軍に捉まり、騰は合従軍で臨武君を討った騰への恨みを持つ項翼に捉まり、こちらも前線が膠着してしまっていた。
⑥呉鳳明の一手
そこで呉鳳明が驚きの一手を打つ。
秦と魏は急造同盟軍のため「挟撃」という方向性しか決めていなかったわけだが、呉鳳明は秦軍を主攻、魏軍を助攻とすることで、戦場に流れを作り出したのだ。
まず録鳴未軍が潰れ役となって乱美迫軍を動かし、乱美迫軍が騰のところへ行き騰軍を解放。
そこへ兵を半分置き、さらに蒙武軍を解放した。
主攻・秦軍のために魏軍が潰れ役になったということだ。
⑦蒙武vs満羽
しかし蒙武は満羽を倒さなければ先へ進めなかった。
満羽の近衛兵団を蹴散らした蒙武は満羽との一騎討ちに。
蒙武は満羽の一撃で落馬させられてしまう。
満羽は蒙武に“かつての自分たち”を重ねたようで、蒙武の“背負っているもの”を気にしていた。
「背負っているものが死んだ人間の思いならば永劫に力となるであろう。だが生きている者の何かを背負っているとしたら、お前は“それに裏切られることがあるかもしれない”ということを覚悟しておかなければならない」と満羽は言った。
⑧魏軍本陣を守る録鳴未
一方、戦場中央では千斗雲が録鳴未との戦いに飽き、狙いを魏軍本陣に変えて動き始めた。
想定内である呉鳳明はすぐに龍范の軍を守備に回す。
すると千斗雲軍の背後を討つように録鳴未軍も来ていた。
普段は憎き敵だとしても、友軍は命がけで守る…録鳴未の漢気である。
⑨退却を決断する寿胡王
騰が什虎本陣に迫ってくると、寿胡王は“後退して立て直す”ではなく“退却”を決断した。
理由は満羽に想定外の変化があったこと。
満羽は本来千斗雲と同じく自ら突っ込んで前線を押し上げるタイプなのだが、今回はそうしておらず逆に前線を押し込まれている。
どうやら満羽がかつての自分を重ねる何かを蒙武に見出したからのようで、寿胡王は非難するよりむしろその満羽の変化に興味を抱いた。
しかし寿胡王にはもう1つ誤算があった。
それはあの呉鳳明が主攻を任せた騰の圧倒的な突破力である。
退却を開始した時にはすでに騰が寿胡王の眼前に迫ってきていたのだ。
騰の急襲により楚軍本陣は陥落、秦魏同盟軍の勝利となった。
⑩実はすでに什虎城攻めもしていた
本陣が落ちたとはいえ什虎軍にはまだ満羽・千斗雲・玄右が残っている。
しかし彼らは全軍撤退を選択。
什虎軍が退却を決断したことで項翼・白麗軍も退却を開始した。
楚軍が退却を始めた頃、秦軍本陣に什虎城が陥落したとの報が入る。
実は月知平原での戦いと並行して、魏軍の別動隊が什虎城攻めをしていたのだ。
恐るべき呉鳳明の手腕である。
⑪寿胡王は生け捕りに
騰は寿胡王を討たず生け捕りにしていた。
抵抗がなかったこともあるが、什虎とは何かと聞くためであった。
寿胡王は秦軍に、什虎の面々が“守るべきものに裏切られ、帰る場所を失った者たち”であることと、その過去から虚無の底で死んでいた満羽の心が、蒙武との出会いによって変化が生じたことを語った。
寿胡王は満羽の変化の先にあるものに希望を抱いていた。
その結末を見届けるのを秦軍に託して命を捨てる覚悟を見せたが、騰は寿胡王を殺さなかった。
この先の対楚を見越しての情報収集のためであったが、騰は寿胡王に「満羽の結末はお前が見届けろ」とも伝えた。
⑫什虎軍は楚王都・郢へ向かう
満羽たち什虎軍は城に戻ろうとしていたが、その途中ですでに城が陥落したことを聞く。
彼らはまた帰る場所を失ってしまったのだ。
そのまま城を取り戻すという意欲を見せることなく、彼らは楚王都・郢へと向かっていった。
キングダム:什虎(じゅうこ)攻略編結末
勝利したことで秦と魏の同盟が正式に成立する。
3年間の同盟締結
什虎を手に入れ、秦の憂いがない中で韓を削って西への領土拡大へ
→3年後この什虎は秦にとって最悪の脅威に?
趙王都・邯鄲攻略に全力を注げるようになる
→武城・平陽攻略戦へ
キングダム:什虎(じゅうこ)攻略編まとめ
什虎(じゅうこ)攻略編は秦と魏が同盟を結ぶために同盟軍として楚の什虎を攻めるというエピソード。
秦と魏、特に騰と呉鳳明の共闘は見ものであるが、互いに実力を認めつつ3年の同盟が終わったら真っ先に倒さねばならない敵、という認識で手を組んでいるのが面白い。
また今回描かれた什虎軍は非常に面白い存在であったが、やはり気になるのは満羽の「生きている者の何かを背負っているとしたら“それに裏切られることがあるかもしれない”ということを覚悟しておかなければならない」という言葉だ。
この時、蒙武は“背負っているもの”として親友の昌平君を思い浮かべている。
野暮だと思うが先の史実を踏まえると、やはりこの什虎攻略編はこの先に訪れる蒙武と昌平君のエピソードに関しての非常に重要な布石として描かれた気がする。
とはいえ戦いとしてもやはり面白いし、什虎軍のキャラや録鳴未の存在感なども注目の必見エピソードだ。
これに勝利した秦軍はいよいよ趙攻めに全力を注ぐ!
転勤で全国を渡り歩く流浪のマンガ好き。
現在は北海道在住で金カム等の聖地巡礼を満喫中。
自分用のメモを発展させブログにした形でして、端的にまとめるためにあえて感情を省いた文章にしています。
基本的には自分が好きな漫画だけになりますが、作品を知りたい・内容をおさらいしたい・より漫画を楽しみたい等のお役に立てればと思っています。