『忍者と極道』は近藤信輔によるアクション漫画。
「決めようか、忍者と極道、どちらが生存るか死滅るか」というキャッチコピーを持つ忍者と極道の殺し合いの物語なのだが、これほど「とにかくまず読んでくれ!」としか言えない漫画はないのでその魅力を語っていきたい。
『忍者と極道』の概要
『忍者と極道』は2020年1月20日より連載が開始された近藤信輔によるアクション漫画。
講談社が運営する漫画アプリ/ウェブコミック配信サイト「コミックDAYS」および「マガポケ」で連載中の人気作品だ。
単行本は講談社(モーニングKC)から最新14巻まで刊行されている。(2024年11月13日現在)
近藤信輔先生と言えば「週刊少年ジャンプ」にて『烈!!!伊達先パイ』『ジュウドウズ』を連載していた奇才だが、本作では両作のコアなファンを唸らせたどころか、これまで以上に底抜けにアクの強い作風によって新規ファンも急増中。
連載以来「WEBマンガ総選挙2020」第9位、「このマンガがすごい!2021」オトコ編・第8位、「次にくるマンガ大賞2021」Webマンガ部門第10位受賞と注目され続け、2023年にはAnimeJapanの投票企画「アニメ化して欲しいマンガランキング」第6回にて第10位を獲得するなどアニメ化への期待も高まっている。
『忍者と極道』のあらすじ
『忍者と極道』のストーリーをざっくり言えば、裏社会で悪事をかます極道とそれを誅し裏から民を守る忍者の長きに渡る因縁が描かれる、タイトル通り「忍者と極道」の物語である。
忍者と極道の因縁は江戸時代1657年、後に“明暦の大火”として語られる、裏江戸守護番・神賽惨蔵と始祖の極道・幡随院長兵衛の死闘いから始まった。
それから300年以上経った2020年の現代日本が物語の舞台。
ある日、東京・丸の内で高校生の多仲忍者とサラリーマンの輝村極道が出会う。
きっかけは極道が落としたスマホを忍者が拾ったことであったが、そのスマホケースが『フラッシュ☆プリンセス』の限定品であったことから2人は意気投合する。
忍者も極道も熱狂的な“プリオタ”だったのだ。
ところが実は忍者こそが忍者であり、極道こそが極道だった。
つまり“プリオタ”として一瞬にして友となった忍者と極道は、忍者と極道という絶対に相容れない宿敵だったのである。
そして2人が互いの正体を知らないまま、忍者と極道の最後の戦いが幕を開ける―!
『忍者と極道』の魅力・見どころ
『忍者と極道』はとにかく一度読んでもらえれば必ずハマる!と断言したくなるほど魅力が詰まっている。
作品の魅力・見どころを大まかにまとめてみても以下のように9点も挙がってしまう。
①ブッ飛んだ展開とスピーディな進行
『忍者と極道』を読んでいると、一見すると「そうはならんやろ」と言いたくなる描写が多いのだが、そのツッコミすら追いつけないほどの凄まじい“勢い”があり、読了後には絶妙な爽快感と高揚感に包まれる。
首が飛ぶというセンシティブな内容も多分に含まれている(というかお決まりパターンとなっている)が、妙に軽快に描かれているのもクセになる。
②独特のセリフ回し【ルビ芸】
クセになると言えば独特のセリフ回し。
『忍者と極道』が広く注目されるようになったきっかけと言える特徴が、講談社の代表的不良漫画『特攻の拓』のセリフを彷彿とさせるような特徴的なルビ使い=通称「忍極語」だ。
このルビ使いを多用した独特のセリフ回しによって、視覚的に意味を理解しつつ直感的にテンポ良く読み進めることができる。
③見惚れる画力
『忍者と極道』にはインパクトのありすぎるシーンが多い。
バトルシーンや宿敵が対峙した時など1つ1つのコマが大きく描かれていることもあり、その迫力の構図にググっと惹き込まれてしまう。
さらに鼠やモブたちの動きなど細かいところに遊び心が感じられたりもするので、スピーディな進行とはいえ細かい部分まで見逃せない。
また『忍者と極道』に限った話ではないが、近藤信輔先生の描くキャラクター達からもれなく溢れている色気も是非感じて頂きたい。
④熱い名乗り合い
最も見惚れるシーンとして挙げたいのが、戦闘開始前に毎度描かれる忍者と極道の名乗り合いだ。
血が滴る特殊なコマで描かれるそれは『忍者と極道』を代表する熱いシーンとなっている。
100%ブッ殺すと決めた相手には堂々名乗る…!!それが“裏社会の礼儀”だからだ。
⑤多彩な技の応酬
本作は忍者と極道の“バトル漫画”でもあるため、いわゆる必殺技も存在する。
忍者側は『忍手“暗刃”』極道側は『極道技巧』が基本となっており、忍者は忍者の極道は極道の信念と個性が反映された多彩な技が登場するのでネーミングも含めて注目だ。
⑥繊細なキャラクター背景
先に紹介した「ブッ飛んだ展開」とは対照的な表現となるが、『忍者と極道』は繊細なキャラクター背景も魅力。
忍者の宿敵となる極道は作中世界で悪事の限りを尽くす紛れもない悪なのだが、彼らには“社会に馴染めない孤独な大人たち”や“まともに育つ環境を与えられなかった子供たち”など如何ともしがたい生々しい背景があり、気づけば感情移入してしまっている。
もちろん忍者側にも同様に深い背景があり、各キャラクターにそれぞれの人生すべてが乗っているからこそ名言も多い。
⑦プリンセスシリーズ
ストーリーにたびたび登場するのが、作中で放映されている女児向けアニメ『プリンセスシリーズ』。
特に注目すべきがシリーズ第6作目『フラッシュ☆プリンセス』だ。
実は本作はただの抗争漫画ではなく、作中のアニメ『フラッシュ☆プリンセス』とリンクした人間模様が描かれていく。
プリンセスシリーズの大ファン(プリオタ)である忍者と極道が最も熱く語り合っているのがこの『フラッシュ☆プリンセス』なのだが、忍者と極道の関係が『フラッシュ☆プリンセス』の主人公アブちゃんと宿敵ヒース様の関係性に酷似しており、その友情の結末を見届ける物語にもなっているのだ。
『フラッシュ☆プリンセス』を愛し深く理解している、しかし忍者/極道として譲れない信念をもっている2人だからこその葛藤と選択に注目だ。
そして作品を通じて近藤信輔先生のプリキュア愛が存分に感じられるところもたまらない。
⑧黒幕の存在
先述したように忍者と極道の関係性は『フラッシュ☆プリンセス』を再現するように進んでいるのだが、どうもそれを仕組んでいる黒幕がいるようだ。
本棚に囲まれた部屋で彼らの動向を楽しんでいる姿が描かれており、ファンの間ではすでに様々な憶測が飛び交っている。
怪しいのは『フラッシュ☆プリンセス』の脚本家である幡随院孤屠なのだが、彼は世間的にはすでに死亡したとされている。
さらに忍者と極道だけでなく忍者と極道それぞれに複雑な因縁が見えるのだが、果たしてそれすらもすべて仕組まれているのだろうか。
⑨各話のタイトル
おまけの要素として各話のタイトルも注目したい。
『忍者と極道』では「ゴッド・ジャズ・タイム」「幸せの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする」「カミソリソング」「ガラスのブルース」「空に歌えば」「彼女の“Modern…”」「月下の夜想曲」などなど挙げればキリがないが、話のタイトルのほとんどが様々なアーティストの曲名になっている。
曲を知っていると読み方にもさらに深みが増す上にそもそも名曲揃いなので、知らない方は忍極をきっかけに是非曲も忍極も併せて楽しんで欲しい。
『忍者と極道』の2人の主人公
『忍者と極道』はW主人公と言える作品である。
「プリンセスシリーズ」という共通の愛するものを通じて心通わせる親友となった一方で、実は忍者と極道という相容れない信念を持った相容れない存在であった2人の関係性に注目だ。
多仲忍者(たなかしのは)
忍者側の主人公が多仲忍者。
忍者は幼い頃に家族を極道に殺されて以来“笑えない”体質となってしまった15歳の少年だ。
無表情のためクラスで浮いた存在となっている地味な高校生だが、その正体は裏から東京の治安を守る凄腕の忍者「帝都八忍」の1人である。
自分が笑えなくなってしまった分、自分と同じような“笑えない”者達が生まれないように、極道の死滅を目指す。
女児向けアニメ『プリンセスシリーズ』の大ファンであり、それがきっかけで輝村極道と出会い友となる。
輝村極道(きむらきわみ)
極道側の主人公が輝村極道。
極道は表向きは玩具会社ダイバンの企画部長を務めるサラリーマンで、裏では音羽組傘下二代目竹本組の“裏組長”を務める極道だ。
それどころか実は最狂の極道「破壊の八極道」を率いる極道中の極道である。
社会に翻弄された末に悪として弾かれる“孤独な者”達を肯定し、彼らの居場所をつくりたいという理由で忍者の死滅に挑む。
家庭環境と事故が原因で「感情というものがわからない」というが、同じ“プリオタ”である忍者との交流で無意識ながらも感情的な姿が見えるようになっていく。
『忍者と極道』の超ざっくりネタバレ
序章:忍者と極道 邂逅す(1話)
忍者と極道の因縁の解説と、忍者と極道の出会いが描かれる物語のプロローグ。
第一章:赤坂血風狼烟(2~6話)
忍者との決戦に向け、極道が極道たちを集め集会を行う。
その悪しき企みを砕くため、忍者の育ての親のような存在であり“帝都八忍”の1人である璃刃壊左が出陣。
それを極道が切り札である『地獄への回数券』をもって迎えうった!
さらに極道の最強の8人『破壊の八極道』の存在も確認される。
第二章:燃える仁義のカブチカ(7話~17話)
歌舞伎町の地下にあった旧在日米軍用秘密地下キャバレーの跡地「歌舞伎町地下倶楽部」で『破壊の八極道』の1人・夢澤恒星率いる極道達が悪事を企む。
これに忍者の弟弟子であり兄のような存在である祭下陽日が出陣した!
また、忍者が“破壊の八極道”の1人・ガムテと出会う。
第三章:情愛大暴葬(18~37話)
『破壊の八極道』の1人であり「暴走族神」と呼ばれる殺島飛露鬼のもとに、“大人”の日々に馴染めずにいたかつての仲間たち5万人が集結し、帝都高速道路=通称・帝都高での暴走を再開した。
この大規模な悪事に、神賽惨蔵、病田色、覇世川左虎、邪樹右龍、そして忍者の5人の忍者が5か所に分かれ対処に臨む。
そして帝都高の各所で忍者vs極道の死闘いが始まった―!
第四章:幼狂死亡友戯(38~82話)
『破壊の八極道』の1人であり「割れた子供達」の現リーダーであるガムテが、“心を壊された”過去を持つ子供の殺し集団「割れた子供達」を引き連れて総理官邸を襲撃。
官邸には読書感想文コンクールの授賞式で訪れていた忍者も、忍者の晴れ舞台を見るために訪れていた極道もおり、思わぬ形でついに2人は戦場で邂逅することとなる!
第五章:極契大壊嘯(83話~123話)
『破壊の八極道』の1人であり「怪獣医」と呼ばれる闇医者・繰田孔富が、病んだ世界を救済うために水道に麻薬を混入させて東京を破壊。
忍者たちは自らも麻薬で混濁しながらも、麻薬水を止めるために浄水場&水運用センターへと駆けつけ、孔富率いる闇医者集団「救済なき医師団」との死闘いに臨む!
第六章:天秤は厄祭に堕つ(124話~)
『忍者と極道』の書籍情報(サブタイリスト)
単行本は講談社(モーニングKC)より最新13巻まで刊行されている。(2024年6月12日現在)
単行本ではキャラクターの詳細設定やキーパーソンと目される幡随院弧屠の情報などが掲載されているので、忍極をより深く理解たい方はコミックス必須だ。
『忍者と極道』の書籍情報(最新刊発売日)
『忍者と極道』の最新14巻は2024年11月13日(水)に発売した!
収録話は第116~124話で、引き続き描かれる左虎右龍と繰田孔富の死闘と衝撃の結末から斗女とMAYAが主役の新章開始まで贅沢に収録されており、今回もまた濃密な1冊となっている。
炸羅と華虎の激突も必見!
ということで本巻の表紙はド迫力の華虎だ。
また今回もおまけページが充実しているのでじっくり楽しもう!
次回『忍者と極道』15巻の発売日も判明次第掲載予定。
転勤で全国を渡り歩く流浪のマンガ好き。
現在は北海道在住で金カム等の聖地巡礼を満喫中。
自分用のメモを発展させブログにした形でして、端的にまとめるためにあえて感情を省いた文章にしています。
基本的には自分が好きな漫画だけになりますが、作品を知りたい・内容をおさらいしたい・より漫画を楽しみたい等のお役に立てればと思っています。