野田サトル先生による漫画作品『ゴールデンカムイ』(集英社)は、北海道&樺太という実在の土地を舞台にしているため物語に没頭しやすい。
しかし本当に杉元たちがどんなルートでどれほどの距離を移動していたのかイメージできているだろうか。
改めて調べてみると、自分がそのスケールの大きさを把握できていなかったことに気づいた。
ということで本記事では杉元が歩んだ旅路を実際の地図と照らし合わせながら物語の流れを振り返っていく。(細かな誤差は多めに見てください)
ストーリーの整理や聖地巡礼の参考に是非。
小樽~札幌
【参考】 距離156㎞ / 徒歩36時間
始まりは小樽の山。
日露戦争後、一攫千金を求めて北海道へやってきた杉元佐一は、砂金取り仲間の後藤を通じて網走監獄の刺青囚人とアイヌの金塊のことを知り、ひょんなことからアイヌの少女・アシリパと出会う。
杉元は亡き友との約束を果たすため、アシリパは父の死の真相を知るため、2人は協力関係となりアイヌの金塊を追って網走脱獄囚人の刺青を集めることに決めた。
ただしその金塊は陸軍第七師団や土方歳三も狙っており、刺青囚人を巡って衝突…協力…あらゆる形で絡み合っていくことになる。
刺青囚人の1人・辺見和雄がいると思われる積丹のニシン漁場へ。
辺見の煌きを見届け刺青人皮を手に入れた。
帰り道でキロランケと出会う。
囚人に刺青を彫ったとされる“のっぺらぼう”がアシリパの父なのか確かめるために網走監獄を目指すことを決意。
長旅に備え一旦アシリパのコタンに立ち寄る。
フチを谷垣に任せ、札幌へ向かう。(キロランケのなじみの鉄砲店があるため)
札幌に到着した一行は、美人女将がいると噂の札幌世界ホテルへと向かう。
実はその女将は刺青囚人・家永親宜(家永カノ)であり、「同物同治」を信じる彼が宿泊客を餌食にするために経営していたホテルであった。
ホテルには別の刺青囚人・牛山辰馬も宿泊しており、大乱戦の末にホテルが大爆発し、一連の騒ぎはお開きに。
白石が掴んだ情報をもとに次は日高を目指すこととなる。
札幌~夕張
【参考】 距離201㎞ / 徒歩46時間
日高を目指す途中、勇払のコタンでインカラマッと出会う。
インカラマッの占いの力に魅入られた白石を追って一行は苫小牧競馬場へ。
たまたま八百長の現場に居合わせたキロランケが負け馬の騎手として出場することになるが、馬を愛するキロランケは馬に気持ちよく走らせ勝利させた。
アシリパの大叔母が宝物のアザラシの皮の服を売られてしまったということで、買い戻すために一行はエディー・ダンと接触する。
モンスター(悪魔のヒグマ)を退治したら返すというエディーの条件をのみヒグマ3頭と戦うことになり、そこで八百長を台無しにしたキロランケを追ってきたヤクザの親分・若山輝一郎とその部下・仲沢達弥のラブストーリーを見届けることとなった。
エディーから夕張に刺青人皮を持っている者がいるっぽいという話を聞き、次の目的地が夕張となる。
夕張に住む剥製師・江渡貝弥作がその持ち主であったが、江渡貝くんはすでに鶴見に抱き込まれていた。
江渡貝くんを巡り杉元・土方・第七師団の三派が衝突。
杉元・土方両派は、鶴見が江渡貝くんに贋物の刺青人皮を作らせていたことを知り、贋物を見極められるかもしれない贋作師・熊岸長庵に会うために彼が収監されているという月形の樺戸監獄を目指す。
夕張~旭川
【参考】 距離141㎞ / 徒歩32時間
樺戸監獄から脱獄してきた刺青囚人・鈴川聖弘とその一味が乗っ取り潜伏していたコタンにたまたま立ち寄ることとなった杉元一行。
彼らと一緒にいた熊岸長庵はその騒動の中で亡くなってしまったが、代わりに巧みな詐欺師である鈴川を確保した。
その頃、杉元たちと別行動していた白石が第七師団に捕まってしまう。
のっぺらぼうに接触できる可能性のある白石はキーマンであるため、一行は白石奪還を目指し、本部がある旭川へ向かう第七師団の後を追う。
先駆けて土方とキロランケが白石奪還に向かい、神居古潭の橋を落とすなどあらゆる手を尽くすが、白石は土方の間者であったことが杉元にバレることを恐れてそのまま脱走を続けた。
結局白石を連れ戻せず、一行は危険を承知で軍都・旭川の第七師団本部に乗り込むことにした。
犬童四郎助に扮した鈴川と顔を隠した杉元が第七師団本部に潜入。
淀川中佐をうまく丸め込むも、鶴見お気に入りの部下・鯉登少尉に正体を見破られ逃亡することに。
鈴川を失ってしまいつつも何とか白石を救出した杉元は、白石・アシリパ・尾形と共に第七師団から奪った飛行船で追っ手を振り切る。
旭川~釧路
【参考】 346km / 徒歩78時間
ここがかなりの長距離移動となるが、杉元たちは大雪山を横断してしているためこの地図経路より距離は短いはずだ。
不時着した杉元たちは途中から徒歩での大雪山越えとなる。
過酷な山中での一晩を過ごす中、アシリパと杉元は“すべてが終わったらアシリパを杉元の故郷に連れて行き干し柿を食べさせる”という約束を交わした。
また、第七師団は杉元たちが網走方面へ下山すると考えているはずだと読み、意表をついて十勝方面へ下山する。
そのまま鈴川から聞いていた「刺青囚人の1人が釧路にいた」という情報をもとに釧路へ立ち寄ることにする。
釧路に着いた杉元たちはインカラマッとチカパシに遭遇し、谷垣が動物を斬殺する犯人=“カムイを穢す人間”として地元のアイヌに疑われ追われていることを知る。
真犯人は刺青囚人の姉畑支遁であり、彼が憧れのヒグマとのウコチャヌプコロを果たした姿をもって谷垣にかけられた容疑は晴れた。
また、釧路では突然の蝗害に見舞われる。
女性陣が船で海上へと逃れた一方で、男性陣はラッコ鍋を囲み熱くなった身体をぶつけ合っていた。
釧路~網走監獄
【参考】 距離200km / 徒歩45時間
塘路湖近くのコタンで刺青囚人・都丹庵士の情報を手に入れた杉元たちは、彼を捕らえるべく屈斜路湖を訪れる。
都丹を親分とした盗賊団と闇夜での死闘になるが、合流した土方の説得により都丹が仲間となった。
網走へ行く前に一行は北見の写真館で撮影を行う。
インカラマッとキロランケの写真を撮って誰かに調べさせようという土方・杉元の思惑によるものであったが、気づけば谷垣のグラビア撮影会になっていた。
一行はついに目的地・網走監獄に辿り着く。
綿密な計画のうえの潜入であったはずだが、のっぺら坊との対面を前に土方一派の策により杉元とアシリパは別々にされてしまった。
第七師団の襲撃…迎え撃つ網走監獄…囚人たちの解放…瞬く間に戦場となった網走監獄を這い進んでいた杉元は、ついにのっぺら坊=アシリパの父・ウイルクと邂逅を果たす。
アシリパも2人の姿を遠目から確認するが、刹那、ウイルクと杉元は銃撃を受け倒れてしまった。
実はこれはキロランケと尾形による裏切りであった。
2人は暗号解読の唯一のキーマンとなったアシリパを連れ、ウイルクの故郷である樺太へと発つ。(アシリパは杉元の生存を知らないまま)
杉元はこれまで手に入れた刺青人皮を渡してでも第七師団と手を組み、アシリパを連れ戻すことを決めた。
舞台は樺太へ
【参考】 距離1178㎞ / 徒歩264時間
杉元は谷垣・月島・鯉登・チカパシ・リュウと共にアシリパたちの足跡を追う。
一行は南樺太の玄関口・大泊で出会った樺太アイヌ少女・エノノカとその祖父と契約し、犬橇で北上。
途中立ち寄ったロシア人の村でスチェンカに参加し、刺青囚人・岩息舞治と出会ってバーニャした。
ひょんなことから曲馬団「ヤマダ一座」に出会った杉元は、自分の安否をアシリパに知らせるために、樺太一の街・豊原で行われる公演に出させてもらうことにする。
鯉登の活躍もあり公演は成功を収めたが、残念ながらその声はアシリパには届かなかった。
代わりにキロランケの目的地が「アレクサンドロフスカヤ監獄」ではないかという情報を掴み、一行はさらなる北を目指していく。
犬橇で樺太を北上していた杉元たちは急なホワイトアウトに見舞われ、極寒の大地で遭難しかけてしまう。
月島たちが燈台守の夫婦に出会ったことで杉元たちは九死に一生を得た。
亜港までやってきた杉元たちは、大陸まで繋がる流氷の上でついにアシリパたちに追いつく。
杉元・アシリパ・白石は黄金のシャワーを浴びながら再会を喜んだ。
一方で尾形がアシリパの矢で右目を失ったり、月島・鯉登・谷垣がキロランケとの戦闘で重傷を負ったり、3人との戦闘でキロランケが亡くなったりと多くの血が流れることとなった。
その後、尾形を医者に見せた隙に尾形が逃亡した。
敷香に立ち寄っていた杉元たちをロシア人スナイパー・ヴァシリが襲った。
ヴァシリの標的は尾形であり、尾形がいないことを知ったヴァシリは尾形を追うために杉元ら一行に(勝手に)加わった。
鶴見との合流の日まで一行は豊原で時間を過ごす。
活動写真家の稲葉たちに出会ったアシリパは彼らが撮っているシネマトグラフでアイヌの文化を残そうとしたがうまくいかなかった。
また一行はこの後エノノカたちの集落に着き、彼女たちとの契約を終える。
チカパシは谷垣の後押しと自分の意志により、ここで谷垣との旅を終えエノノカたちと共に生きていくことに決めた。
大泊にて鶴見と合流。
鶴見と直接対峙したアシリパはその存在を拒否し、逃走を開始した。
これをもって第七師団とは再び敵対関係となり、インカラマッのことを考えて谷垣ともここで別れることにする。
杉元・アシリパ・白石・ヴァシリは海軍の駆逐艦に追われながら、民間の連絡船で北海道への帰路についた。
北海道帰還~札幌
【参考】 距離482㎞ / 徒歩109時間
船を降りて第七師団を撒いた杉元たちは、流氷の上を歩いて北海道に帰還した。
すると沿岸のコタンで“雨竜川で砂金で大儲けしている男がいる”という話を聞きつける。
雨竜川を訪れた杉元たちは松田平太という手練れの砂金掘り師に出会う。
杉元と白石は優しい平太に師事するが、実は平太は自分と家族4人+ヒグマの人格を持つ多重人格者であり、「道東のヒグマ男」と呼ばれる刺青囚人であった。
そんな自分を終わらせるために平太は自ら死を選ぶ。
杉元たちは彼が持っていた“支笏湖に沈んでいた砂金サンプル”を活用し、刺青囚人・大沢房太郎(海賊房太郎)を捜すことにする。
平太が持っていた砂金サンプルの情報をもとに、空知川の流域に住んでいるアイヌの集落をまわり、房太郎の情報を集める。
すると歌志内の炭鉱の方で変な入れ墨の男を見かけたという情報を手に入れた。
また道中で杉元はシマエナガのウパシちゃんとひとつの物語を紡いだ。
確かに歌志内には変な入れ墨の男がいたが、“顔中に”変な入れ墨を施した変な男であった。
失意のうちに歌志内を立ち去った杉元たちは、その男が本当の刺青囚人・上エ地圭二だったことにこの時点では気づけなかった。
平太の情報をもとに次は沙流川を目指す杉元であったが、その前に連続殺人事件が起こっているという札幌に立ち寄ることにする。
江別まで一気に石狩川を下ろうと外輪船に乗っていると、独自に金塊探しを行っていた海賊房太郎と遭遇。
彼の一味と戦闘になるが、その末に杉元は房太郎が鶴見と土方を出し抜く有益な情報を持っているかもしれないと判断して手を組むことにした。
- ジャック・ザ・リッパーの事件を模倣していると思しき連続殺人犯
- 札幌へ向かっているっぽい刺青囚人・上エ地圭二
この2人を捕らえるため、杉元たちは札幌へと急ぐ。
また連続殺人事件を捜査するため、第七師団と土方陣営も続々と札幌に集結していた―!
札幌~函館
【参考】 距離250㎞ / 徒歩57時間
札幌にて土方陣営と再会した杉元は不本意ながらも再び手を組むことにし、共に刺青の暗号解読に臨む。
同時に連続殺人犯=刺青囚人マイケル・オストログの札幌最後の目的地が札幌ビール工場だと突き止めた一行はそこでオストログを待ち伏せするが、騒ぎを察知した第七師団も集まり、工場内での大戦闘となっていった。
争乱の中でアシリパが第七師団に確保され、参戦してきたソフィアと共に鶴見のもとに捕らえられてしまう。
アシリパとソフィアを救出したものの、鶴見に暗号解読の鍵を教えることになった。
それを出し抜くために、杉元ら一行は房太郎が最期に教えてくれた情報=アイヌが最初に金塊を隠した場所である函館に向かうことにする。
土方、鶴見、それぞれが暗号を解読。
ウイルクが暗号に記したその場所は函館・五稜郭であった。
先駆けて函館へ向かっていた杉元・土方陣営が金塊と北海道の土地の権利書を発見!
間もなく五稜郭を第七師団が取り囲み、迎え撃つ覚悟をしていた杉元・土方陣営との戦争となる。
ソフィアたちや谷垣の助けを受けつつ一同は五稜郭を脱し、戦いの舞台を函館行きの列車に移す。
五稜郭から列車での戦いで各陣営から多くの死者を出しながら戦いは終結。
杉元と鶴見が揉みあう先頭車両が終着・函館駅に突っ込み、2人を乗せたまま機関車は函館湾に沈んだ。
約3000㎞!?【まとめ】
ざっくりではあるがストーリーとともに振り返ってきた杉元たちの旅路。
歩んだ道のりを全体図にするとこうである。
小樽からスタートしてゴールとなった函館まで。
北海道全土と樺太を股にかけた壮大な旅路であることがわかる。
北海道だけでも広大なのに樺太編が描かれて一気にスケールが爆発した。
どのくらいかというと、直線距離で東京からフィリピンのマニラの距離感である。
それほどの距離を、それぞれの目的・あらゆる思惑・様々な生き様と絡み合いながら貫き歩き通した濃密な旅路。
地図と共に物語を読み進めると、読後感もひとしおである。
転勤で全国を渡り歩く流浪のマンガ好き。
現在は北海道在住で金カム等の聖地巡礼を満喫中。
自分用のメモを発展させブログにした形でして、端的にまとめるためにあえて感情を省いた文章にしています。
基本的には自分が好きな漫画だけになりますが、作品を知りたい・内容をおさらいしたい・より漫画を楽しみたい等のお役に立てればと思っています。